MASARU KAWAI

MASARU KAWAI

個展のご案内です。

日時;2023.8.5-8.20
会場;CURATOR’S CUBE
東京都港区西新橋2-17-1 八雲ビル3F

今回は2016年にSOMAの活動を開始し、2018年の竹中大工道具館道具館での個展、2022年にストックホルムでの展示と継続してきた中、今の時点での活動の再総括という立ち位置での展示会となります。
もっと森や木のことを多くの方々と共有するためにはどうしたらいいか?を主点に置いた展示となります。

また関連イベントとして、建築家の佐野文彦さん、フォレスターの小森胤樹さん、森の案内人の三浦豊さんとのトークショーや、三浦さんの東京の森を歩くツアーもございます。

ぜひ多くに方にご覧いただければと思います。

在廊予定;8/5,6,12

新年

2023 01 03

明けましておめでとうございます

ゆっくりした正月休みを過ごしておりました。

昨年を振り返れば、杉・檜の良さをより多くの方々に伝え、安すぎる国産材価格の見直しに少しでも貢献できる制作を、と始めたSOMAの取り組みでしたが、コロナやウクライナ侵攻に起因する日本産木材の価格高騰などがあり、今自分は一体何をすべきなのか、揺らいでしまった年でもありました。
しかしスウェーデンでの展示機会もあり、外側から日本を見ることが出来たことで、少し整理できた気がします。

今年は自然、資源、環境などの分野をより勉強し、理想とする山の姿を明確にし、そのための制作、活動を深化させていきたいと思っております。

個展、グループ展は京都、東京、台湾で開催予定です。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。
(スウェーデン報告もボチボチアップしていきます)

川合優

滞在5日目

2022 12 26

ミュージアムでの制作のため、ストックホルムへ電車で5時間かけて移動。
ネットで予約していた列車は急遽運休になったらしく、慌てて別の便を予約し直す。
(全てのものがネット経由となり、駅の窓口は無人。こういうときに非常に困る。)

今回の旅は田舎からのスタートだったので、ストックホルムがものすごく都会に感じるが、港に出れば木造船の学校や制作現場があったりで、この国のものづくりへの愛情のようなものが伺える。
先日の工芸学校でも感じたが、日本は木の文化がまだ残っていると思っていたのは間違いなんではないのかと。もちろん国や行政や何らかの支援を受ける形のレベルでは残っているが、一般市民の心に残っているかといえば疑問で、でもこちらの国の人には確実にそれを感じることができる。
(それが普通すぎるがゆえに、日本のように工芸作家として食べていく難しさはある)

夜は同じ展覧会に参加のアーティストやパリから来たギャラリストと一緒に、伝統的なスウェーデン料理を食べに。
トナカイの肉と北極イワナを頂いた。どんな料理にもほぼベリーが添えられている。
とても美味しいのだが、身体が疲れていて眠くて仕方がない。

しかし、フランス人は本当に食べることが好きだな。
バーに飲みに行ってからレストラン行って、またバーに飲みに行く。食事中も突然歌が始まって強い酒で乾杯してまた食べる。
歌って踊って飲んで食べて。
なぜか100%でそれについていけない自分がどこかにいて悔しい。

地元の工芸学校セーテルグランタンへ。
ここは家具づくりの基礎を学ぶ学校なのだが、木の伐採から鍛治仕事、アナログな道具での加工を学ぶ事ができる。
日本の職業訓練校などとは違い、工芸とは何か、という根本的な学びがここにはある。
素晴らしい。

その後、昨日とはまた違う民俗資料館へ。
まさに工芸学校でやっていたような加工からなる、家具や木製の食器があった。
日本と同じく、100年前までは生活の道具がほど全てと言っていいほど木からできている。
ベットは長さが1500mmほどしかない。ジャガイモの生産が始まる以前は、食糧事情が厳しく、スウェーデン人も小柄だったらしい。また、真横になって寝る習慣もなかったのだとか。

最後にサウナ。
村営のサウナがあり、300円ほどで2時間貸し切れる。目前には湖。
10月なのでもちろん恐ろしく冷たいが、サウナと湖の往復によって、体が自然に溶けていく感覚になる。これが北欧のサウナ文化なのだと思った。
日本でも琵琶湖や、川に近い場所では、充分に同じ経験ができると思う。

夜はこちらの芸大の先生のお宅でお世話に。

滞在2日目 (3)

2022 11 01

今日は農村の建築などを見学。

写真1,2
教会の屋根は住民が持ち寄った赤松の芯材で葺かれている。日本の松より成長が遅いため、脂が多く長持ちすると思われる。
スウェーデンでは大抵、湖の近くに教会が建てられ、夏は舟、冬は氷の上を馬車を走らせ集まっていた。

写真3
17世紀からの古い民家群が、地元のボランティアによって美しく残されていた。100年前まで現役。
材は主に赤松。

写真4
屋根は脂気が多く腐りにくい白樺の樹皮の上に、赤松を4つに割っただけの材が重りとして乗せられている。
農村では、ほとんどの家がこの組み合わせだった。

写真5
火災をくぐり抜けた松は、一時的に成長が遅くなり、より目が詰んで強い材となる。肝心な場所に使われていた。

写真6
トイレ。3人並んで用が足せる。使わせてもらってみたが、思ったより快適。ただ真冬は、、、。

写真7-10
おばあちゃんの隠居小屋。
牛1頭、山羊3頭との同居。部屋に家畜がいるだけで暖房になる。
ベットと暖炉、家具少しに小さな窓が2つあるだけだが、なぜか豊かな生活がイメージ出来てしまう。

滞在2日目 (2)

2022 10 31

滞在中お世話になっている、誠也さんの森を案内して頂く

写真1
枝に付いているコケ。このコケは環境指標のひとつで、森に多様性がある事の証明になる。

写真2
これもコケ。トナカイの大好物。

写真3
地面はフカフカ。厚み10センチの絨毯を歩いている感覚。コケを剥がすと白い菌糸が張り巡っている。
誠也さんはとにかくコケの重要性の話をされる。コケはフィルターであり、そのフィルターを通った綺麗な水が湖に流れ込む。
スウェーデンでは炭素の固定の2/3をコケが担う。確かに木々の葉は上の方にしか付いておらず、呼吸量としては少なそう。
アマゾンなどでは逆に、ほぼ樹々が炭素を固定している。日本ではどうなのだろう。ご存知の方いましたら教えて下さい。

写真4
チェンソーの挽き粉の跡。ここだけコケが無くなってしまっている。その森の樹の粉であってもコケにとっては負担になってしまう。重機を入れたり、皆伐して急に日光が差し込むなどすれば、致命的だ。
人間のいない時代、森はどれだけ豊かだったか。人間が、これからも生きていくならば、どう森と接するべきか。
大切な何かがここにある気がする。

写真5,6
葉が下の方まで付いている木がトドマツ。幹だけが見えるのが赤松。
スウェーデンは落雷による自然火災が多い。地表近くまで葉のあるトドマツは、この火災によって淘汰されるが、赤松の樹皮は火によって炭化し、火災を生き延びる。

写真7
ブルーベリーとコケモモ
スウェーデンには自然享受件というのがあり、誰の森であっても自由に自然の恩恵を受ける権利がある。素晴らしい事だと思う。そこに制限をかける事は、自然への興味、理解を喪失する事にしか繋がらない。
自然を享受しすぎてこの後下痢になる。

写真8
この太さで樹齢120年。
日本の杉だと50年生くらいの感覚。
いかに日本の気候が恵まれているかが分かる。

写真9
中心に近い部分の年輪が非常に細かい。若い頃、非常に苦労して育って来た木だ。

つづく