MASARU KAWAI

MASARU KAWAI

スウェーデン滞在中は、備忘録兼ねて感じたことを発信していきます。

写真1
スウェーデンよく、森と湖の国と言われる。湖は9万もあり、森林率は日本と同等。
しかし決定的に違うのは、小径木ばかりの森やまばらに木が残っている森が多く、日本よりかなり積極的に利用しているのが分かる。そして山らしい山が無く、今日数時間移動した中で最も高い山で300mほどだった。
平地なので木の伐採などは日本とかなり勝手が違うだろう。

写真2
鉄道で材木を運ぶための貨車。
もちろんトラックで運ぶこともあるが、岐阜県で見かけるほど多くはない。ダーラナ県はもともと鉄、銅で賑わった地方で、鉄道がしっかり整備させているので、元々あるインフラはしっかり利用している。

写真3
航空写真
緑のパッチワークは日本の感覚だと田んぼか畑のようだが、実は全て森林。僅かに見える濃い緑は高樹齢の針葉樹。他はきちんと利用されている森。林業だが農業にかなり近い感覚。
スウェーデンではパイオニアツリー(丸裸になった後まず生えてくる木)は白樺で、極相(最終的な森の植生)は比較的暖かいところはモミ、寒い地方はトドマツなど。植林する場合は広葉樹を5-10%入れないといけない決まり。

写真4
小規模の林業家が多く、小型機械が活躍している。なぜ個人でそれほど設備投資が出来るのか不思議だったが、法人化した上での設備投資は消費税25%がまるまる還元させるらしく、つまり全て25%OFFで買えてしまうのだそう。
羨ましい…
チェンソーや刈り払い機など含め、これらの燃料は主に化石燃料だが、バイオ燃料を積極的に取り入れ、400円/Lと高いが排気ガスも環境に良くカーボンも付かないため結果的に機械の寿命が伸びるので、ほぼそれが主流になっている。
普通のガソリンスタンドのディーゼルにも、赤松から作ったバイオ燃料が10%入っているらしい。(出力はやや落ちるが)

写真5
ムースを運ぶための荷台。
スウェーデンではオオカミがいなくなった影響で、ムース(ヘラ鹿)が大量繁殖してしまった。日本の猪、鹿の被害と同じだが、ムースは体長3m体重800キロにもなり、狩猟の際には重機が必要。ちなみに撃ったものは全て食肉となる。

写真6
材木屋にて。
欧州赤松の板材。防腐処理のものだが全く臭いがしない。一体何が塗布されているのか。500円/Mくらい。
こちらは高樹齢の木が全くないので、日本の銘木屋みたいな店はなく、建材屋に近い。ドライブスルー方式になっていて、とらっくではなく乗用車で牽引するのが普通。

写真7
スプルースのサウナ用羽目板。おそらく2×4材をとった残りを加工したもので、幅60くらい。サウナなので急激な伸縮を考慮しての幅と思うが、日本ではここまで狭くは使わないだろう。さらにこの残りで小さい部材を挽いている。

写真8
滞在中は#seiyamitazakiさんにお世話になっています。今夜はトナカイをご馳走になりました。

ストックホルムにある、東洋博物館で開催されるJaxtaposingCraft参加のため、スウェーデンに来ました。
(ロシア上空を飛べないのと減便で全部で24時間もかかった…)

北欧はとにかく環境への意識が高く、この展覧会も自然の循環がテーマとなっています。
僕は和紙の棚や経木の皿、素木の箱など、温暖多雨で樹々の成長が早いからこそ可能となる、世界的に見てもサイクルの早い作品を日本ならではの木工として展示します。

今回は2週間の滞在ですが、前半はダーラナ県というところで地元の林業、木工、森林資源がどう循環しているのかなどを見学し、後半はストックホルムでの制作、オープニングレセプション、トークなどに参加する予定です。
スウェーデンは木材自給率が140%だそうで、間違いだらけのバイオマス含め40%そこそこの日本から見ると夢のような数字ですが、再生可能な資源として強力に推し進めた結果、生物多様性がおざなりになってしまうなど新たな問題も表面化しつつあります。
そんな中、2周くらい遅れている日本に、ギリギリ残っている本来の木の文化に興味を持ってくれての参加オファーだったのではと思っています。

何はともあれ、この展覧会がお互いの国にとって良い方向に向かうよう、頑張ってみます!

そして到着してまず驚いたのが、山が無い!!
これは林業の形態も大きく違いそう。

2022 10 03

スウェーデンのストックホルム 東アジア博物館で開催されるJuxtaposingCraft参加のため、しばらくスウェーデンに滞在しています。
会期は2022.10.15-2023.12.31までの予定です。

お急ぎのご連絡は、SNS経由にてお願いいたします。
instagram ; soma_masarukawai

経木

2022 06 03

久しぶりに、経木職人の桂川庄平さんのとのろへ仕入れに。

着くなり嬉しそうに、「ちょっとこれ見とくれよ」と突いたばかりの経木を見せられる。「どうや、これ。あんたどう思われる?」と。
「いつも通り美しいですね〜」と、僕。
「ちゃうちゃう、裏や」と、庄平さん。

話せば、最近また技術の向上があり、裏側が格段にキレイに作れるようになったそう。確かに今までは表はツルツルだったが裏はやや肌が荒れてはいた。でも裏だし、こういうものだと気にはならなかったのだが。
庄平さんに言わせると、表裏の仕上がりが同じになる事で偏りなく乾燥し、材の暴れない商品にまた近づいたのだそう。
それでここ最近、機嫌がいいらしい。

庄平さん、90歳。
足取りがやや心配になって来ていらっしゃるが、未だ好奇心の塊。
尊敬しかない。

そしてその後、丸太の仕入の際どこを見て決めているか?という僕の質問に真摯に答えて下さった。

まずは年輪が正円に近く、均一で詰まっていること。そして樹皮が整っていること。
でも一番大切なことは、この音や、と石をおもむろに掴んで丸太を叩き、聞かせてくれた。
それはスイカの中身が詰まっているかお尻を叩いて確かめるときのあの音で、その音が濁っていたり、低かったりすると買ってはいけないなのだそう。
「ただ市場の人間に見つかったらダメやぞ」と舌を出しておどけながら。

帰りにはいつものように、缶ビール、缶コーヒー、封の開いた菓子パン、食べかけの駄菓子を持たせてくれて、奥さまと2人して見送って下さった。

なぜか、お話するだけでこちらまで幸せな気持ちにさせてくれる人っていますよね。
そんな人。

折敷

2022 06 01

杉の折敷3種
330×330mm

上: 神代杉。地中に数百年埋まっていたもので、タンニンと土壌の鉄分が反応してグレーになった。近年、神代杉も非常に希少に。

右: 秋田杉。おそらく植林のものだが、丁寧に枝を打ち管理を行き届かせる事で極限まで木目を細かく整えたもの。脂は少なく涼やかな美しさが特徴。女性的と言われる。

下: 天然の杉。産地は不明たが、おそらく日本海側である。柾目で330mm取れるという事は、丸太の直径ではゆうに1mを超える。塗装しなくてもこの木の持つ脂で艶々。香りも強い。

2022 05 29

個展のお知らせです

6/24(金)-29(水) 11:00-18:00
銀座日々
東京都中央区銀座3-8-15-3F
24、25日在廊いたします。

写真は団扇(うちわ)型の盆
材は上から、欅と黒柿、栗と黒柿、神代欅、欅と黒柿
暑い夏の日に、涼しげなお菓子などいかがでしょうか。