MASARU KAWAI

MASARU KAWAI

杉の棚

2015 12 19

この棚に使っている杉は、少し変わっている。
大きな節が沢山あるのに、木目が非常に細かい。
節というのは、言わば枝の痕跡なのだが、太い枝(=節)が多いという事は、つまり沢山の葉っぱがついていたという事になる。
葉が沢山あればたくさん光合成をして、たくさんのエネルギーを生み出す事ができるということであり、そういう木は成長が早く、つまり木目の粗い木になる。
しかしこの木は、そうでない。
木目が細かいというのは、苦労して成長した証だ。
たくさんの競争相手のいる中で、こぼれ落ちる僅かな光りを求め精一杯枝を伸ばし、戦って戦って少しづつ大きくなってきた木だ。
そんな生命力のみなぎる木は、大きな家具を作るのには向かない。
人に対して強すぎる。
なるべく無駄が出ないようにぎりぎりまで薄くし、細い柱を立てた。
小さくても力のある棚になった。