MASARU KAWAI

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経木

2022 06 03

久しぶりに、経木職人の桂川庄平さんのとのろへ仕入れに。

着くなり嬉しそうに、「ちょっとこれ見とくれよ」と突いたばかりの経木を見せられる。「どうや、これ。あんたどう思われる?」と。
「いつも通り美しいですね〜」と、僕。
「ちゃうちゃう、裏や」と、庄平さん。

話せば、最近また技術の向上があり、裏側が格段にキレイに作れるようになったそう。確かに今までは表はツルツルだったが裏はやや肌が荒れてはいた。でも裏だし、こういうものだと気にはならなかったのだが。
庄平さんに言わせると、表裏の仕上がりが同じになる事で偏りなく乾燥し、材の暴れない商品にまた近づいたのだそう。
それでここ最近、機嫌がいいらしい。

庄平さん、90歳。
足取りがやや心配になって来ていらっしゃるが、未だ好奇心の塊。
尊敬しかない。

そしてその後、丸太の仕入の際どこを見て決めているか?という僕の質問に真摯に答えて下さった。

まずは年輪が正円に近く、均一で詰まっていること。そして樹皮が整っていること。
でも一番大切なことは、この音や、と石をおもむろに掴んで丸太を叩き、聞かせてくれた。
それはスイカの中身が詰まっているかお尻を叩いて確かめるときのあの音で、その音が濁っていたり、低かったりすると買ってはいけないなのだそう。
「ただ市場の人間に見つかったらダメやぞ」と舌を出しておどけながら。

帰りにはいつものように、缶ビール、缶コーヒー、封の開いた菓子パン、食べかけの駄菓子を持たせてくれて、奥さまと2人して見送って下さった。

なぜか、お話するだけでこちらまで幸せな気持ちにさせてくれる人っていますよね。
そんな人。