MASARU KAWAI

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森の話

2017 08 15

杉には表杉と裏杉という二種類がある。
表杉は太平洋側に生える杉で、裏杉は日本海側に生える杉だ。
秋田杉や吉野杉、屋久杉など名前は、ブランド名だと思ってもらえればいい。

先日、こんな森へ行って来た。
岐阜県美濃地方の奥山なのだが、とても興味深い森だった。
写っている巨木は、裏杉だ。裏杉の特徴として、ある程度の高さで伐採すると、そこからまた木が生えてくる。なので、このような異様な樹形になる。表杉では、こうはならない。
これらの木は、樹齢およそ500年だという。裏杉が生えているということは、500年前はここは日本海側の気候だったということであり、当時は雪が多く、雪挽きと言って降雪期に雪で滑らせて山から下ろす方法をとっていた。太い幹から細い幹へ変わっている高さのところまで雪があり、この高さで木こりが伐採していたことがうかがえる。
500年前は、こんなに太い杉が林立していたかと思うと、ため息が出る。

そして今度は、時代が下がるにつれて気候が変化し太平洋側の気候に変わっていった。
裏杉ではなく、表杉が育つ環境になったため、近年に植林された杉は表杉で、皆真っ直ぐに立っている。

同じ森の中でいくつもの時代が折り重なる、とても良い森だった。