MASARU KAWAI

MASARU KAWAI

かつて、日本においての木の良さは、「誰にでも使える、何処にでもある、ありがたい存在」ということだったはずなのですが、それがいつの間にか使う必要がなくなり、使い方を忘れ、ついにはただの厄介な存在にまでになってしまったのか?、ということを最近ひしひしと感じています。落ち葉の問題しかり、森林を伐り拓いての太陽光しかり。

そんな中、我々木工家のすべきことのひとつとして、こんな風に使える、こんな風にしたら楽しい、ということを通して、「自然と人間の幸せな関係」を探していけたらと思っています。
そして、それが今取り組んでいるSOMAの活動とリンクしてきているように感じています。

例えば地元の美濃加茂市に多く自生しているアベマキ。木工をしている僕でも初めて使う木でしたが、よく見てみるとこの辺りの古い森には確かによく生えています。
コナラによく似た木で、昔はコナラを薄皮、アベマキを厚皮と言い、その分厚い皮をコルクの代わりとして使ったりもしたそうですが、実際使ってみて感じたのは、非常に重く、強く、粘りがあり暴れやすい木だということでした。おそらくこれは地域性から見ても、農具の柄や農具そのものとして、また燃料としても使われてきたはずです。
実際、今生えているアベマキの多くは地面付近で枝分かれしており、これは伐採し、そこからまた芽吹き育ってきたことの証です。かつてこの辺りの人々がどうやってこの木と付き合ったきたかが垣間見られます。

そして今回、この木でスツールを作ってみました。
鍬(クワ)の柄に使えるような、細くしても粘り強い特性を発揮できるよう、3本足でそれらをつなぐ貫を持たないシンプルな構造です。普段よく使う杉や檜、さらにクリやケヤキでも危険と判断し、作らない(作れない)形です。
経験上、かなり挑戦的な形でやっぱり怖いので、しばらく自分で使ってみていますが、今のところ問題ありません。