MASARU KAWAI

MASARU KAWAI

滞在2日目 (3)

2022 11 01

今日は農村の建築などを見学。

写真1,2
教会の屋根は住民が持ち寄った赤松の芯材で葺かれている。日本の松より成長が遅いため、脂が多く長持ちすると思われる。
スウェーデンでは大抵、湖の近くに教会が建てられ、夏は舟、冬は氷の上を馬車を走らせ集まっていた。

写真3
17世紀からの古い民家群が、地元のボランティアによって美しく残されていた。100年前まで現役。
材は主に赤松。

写真4
屋根は脂気が多く腐りにくい白樺の樹皮の上に、赤松を4つに割っただけの材が重りとして乗せられている。
農村では、ほとんどの家がこの組み合わせだった。

写真5
火災をくぐり抜けた松は、一時的に成長が遅くなり、より目が詰んで強い材となる。肝心な場所に使われていた。

写真6
トイレ。3人並んで用が足せる。使わせてもらってみたが、思ったより快適。ただ真冬は、、、。

写真7-10
おばあちゃんの隠居小屋。
牛1頭、山羊3頭との同居。部屋に家畜がいるだけで暖房になる。
ベットと暖炉、家具少しに小さな窓が2つあるだけだが、なぜか豊かな生活がイメージ出来てしまう。

滞在2日目 (2)

2022 10 31

滞在中お世話になっている、誠也さんの森を案内して頂く

写真1
枝に付いているコケ。このコケは環境指標のひとつで、森に多様性がある事の証明になる。

写真2
これもコケ。トナカイの大好物。

写真3
地面はフカフカ。厚み10センチの絨毯を歩いている感覚。コケを剥がすと白い菌糸が張り巡っている。
誠也さんはとにかくコケの重要性の話をされる。コケはフィルターであり、そのフィルターを通った綺麗な水が湖に流れ込む。
スウェーデンでは炭素の固定の2/3をコケが担う。確かに木々の葉は上の方にしか付いておらず、呼吸量としては少なそう。
アマゾンなどでは逆に、ほぼ樹々が炭素を固定している。日本ではどうなのだろう。ご存知の方いましたら教えて下さい。

写真4
チェンソーの挽き粉の跡。ここだけコケが無くなってしまっている。その森の樹の粉であってもコケにとっては負担になってしまう。重機を入れたり、皆伐して急に日光が差し込むなどすれば、致命的だ。
人間のいない時代、森はどれだけ豊かだったか。人間が、これからも生きていくならば、どう森と接するべきか。
大切な何かがここにある気がする。

写真5,6
葉が下の方まで付いている木がトドマツ。幹だけが見えるのが赤松。
スウェーデンは落雷による自然火災が多い。地表近くまで葉のあるトドマツは、この火災によって淘汰されるが、赤松の樹皮は火によって炭化し、火災を生き延びる。

写真7
ブルーベリーとコケモモ
スウェーデンには自然享受件というのがあり、誰の森であっても自由に自然の恩恵を受ける権利がある。素晴らしい事だと思う。そこに制限をかける事は、自然への興味、理解を喪失する事にしか繋がらない。
自然を享受しすぎてこの後下痢になる。

写真8
この太さで樹齢120年。
日本の杉だと50年生くらいの感覚。
いかに日本の気候が恵まれているかが分かる。

写真9
中心に近い部分の年輪が非常に細かい。若い頃、非常に苦労して育って来た木だ。

つづく

滞在2日目 (1)

2022 10 31

写真1
ステイさせて頂いている家。
ちょうど紅葉中(例年なら雪が舞う季節らしいが)で、村全体が素晴らしく美しい。この家は元左官屋さんの家だったため白壁だが、殆どの家は木の外壁で、この地方で採れるベンガラのような赤茶色の顔料を塗っている。

写真2
テントサウナ。燃料は小割の薪。
シャワーのための温水を作るのは薪ではかなり時間が掛かってしまうが、サウナならものの5分で暖まる事ができる。その後さっと汗を流して入浴の代わりにしている感じ。

写真3
電気式のチェンソー製材機。
節税効果が高いので、森を持っている人はかなりの確率で所有している。値段も40万円くらい。日本だとなぜあんなに高いのか???

写真4
白樺の林
白樺しかない。そもそもこちらは木の種類が極端に少ない。固く重いので木工にも使うが、脂が多いので薪としても優秀。樹皮は防水性が高く、屋根を葺く材料になるし、籠なども作る。根本から先端まで全て使い切る事ができる。

写真5,6,7
村のビーチ(湖)
夏は25度くらいまでは気温が上がる。多少寒くても夏を満喫。
トイレは♡マークが目印。便器は無く、板に穴が開けられている。ビーチでは今でもこれが普通。
つづく

スウェーデン滞在中は、備忘録兼ねて感じたことを発信していきます。

写真1
スウェーデンよく、森と湖の国と言われる。湖は9万もあり、森林率は日本と同等。
しかし決定的に違うのは、小径木ばかりの森やまばらに木が残っている森が多く、日本よりかなり積極的に利用しているのが分かる。そして山らしい山が無く、今日数時間移動した中で最も高い山で300mほどだった。
平地なので木の伐採などは日本とかなり勝手が違うだろう。

写真2
鉄道で材木を運ぶための貨車。
もちろんトラックで運ぶこともあるが、岐阜県で見かけるほど多くはない。ダーラナ県はもともと鉄、銅で賑わった地方で、鉄道がしっかり整備させているので、元々あるインフラはしっかり利用している。

写真3
航空写真
緑のパッチワークは日本の感覚だと田んぼか畑のようだが、実は全て森林。僅かに見える濃い緑は高樹齢の針葉樹。他はきちんと利用されている森。林業だが農業にかなり近い感覚。
スウェーデンではパイオニアツリー(丸裸になった後まず生えてくる木)は白樺で、極相(最終的な森の植生)は比較的暖かいところはモミ、寒い地方はトドマツなど。植林する場合は広葉樹を5-10%入れないといけない決まり。

写真4
小規模の林業家が多く、小型機械が活躍している。なぜ個人でそれほど設備投資が出来るのか不思議だったが、法人化した上での設備投資は消費税25%がまるまる還元させるらしく、つまり全て25%OFFで買えてしまうのだそう。
羨ましい…
チェンソーや刈り払い機など含め、これらの燃料は主に化石燃料だが、バイオ燃料を積極的に取り入れ、400円/Lと高いが排気ガスも環境に良くカーボンも付かないため結果的に機械の寿命が伸びるので、ほぼそれが主流になっている。
普通のガソリンスタンドのディーゼルにも、赤松から作ったバイオ燃料が10%入っているらしい。(出力はやや落ちるが)

写真5
ムースを運ぶための荷台。
スウェーデンではオオカミがいなくなった影響で、ムース(ヘラ鹿)が大量繁殖してしまった。日本の猪、鹿の被害と同じだが、ムースは体長3m体重800キロにもなり、狩猟の際には重機が必要。ちなみに撃ったものは全て食肉となる。

写真6
材木屋にて。
欧州赤松の板材。防腐処理のものだが全く臭いがしない。一体何が塗布されているのか。500円/Mくらい。
こちらは高樹齢の木が全くないので、日本の銘木屋みたいな店はなく、建材屋に近い。ドライブスルー方式になっていて、とらっくではなく乗用車で牽引するのが普通。

写真7
スプルースのサウナ用羽目板。おそらく2×4材をとった残りを加工したもので、幅60くらい。サウナなので急激な伸縮を考慮しての幅と思うが、日本ではここまで狭くは使わないだろう。さらにこの残りで小さい部材を挽いている。

写真8
滞在中は#seiyamitazakiさんにお世話になっています。今夜はトナカイをご馳走になりました。

ストックホルムにある、東洋博物館で開催されるJaxtaposingCraft参加のため、スウェーデンに来ました。
(ロシア上空を飛べないのと減便で全部で24時間もかかった…)

北欧はとにかく環境への意識が高く、この展覧会も自然の循環がテーマとなっています。
僕は和紙の棚や経木の皿、素木の箱など、温暖多雨で樹々の成長が早いからこそ可能となる、世界的に見てもサイクルの早い作品を日本ならではの木工として展示します。

今回は2週間の滞在ですが、前半はダーラナ県というところで地元の林業、木工、森林資源がどう循環しているのかなどを見学し、後半はストックホルムでの制作、オープニングレセプション、トークなどに参加する予定です。
スウェーデンは木材自給率が140%だそうで、間違いだらけのバイオマス含め40%そこそこの日本から見ると夢のような数字ですが、再生可能な資源として強力に推し進めた結果、生物多様性がおざなりになってしまうなど新たな問題も表面化しつつあります。
そんな中、2周くらい遅れている日本に、ギリギリ残っている本来の木の文化に興味を持ってくれての参加オファーだったのではと思っています。

何はともあれ、この展覧会がお互いの国にとって良い方向に向かうよう、頑張ってみます!

そして到着してまず驚いたのが、山が無い!!
これは林業の形態も大きく違いそう。

2022 10 03

スウェーデンのストックホルム 東アジア博物館で開催されるJuxtaposingCraft参加のため、しばらくスウェーデンに滞在しています。
会期は2022.10.15-2023.12.31までの予定です。

お急ぎのご連絡は、SNS経由にてお願いいたします。
instagram ; soma_masarukawai