MASARU KAWAI

MASARU KAWAI

年輪

2016 09 08

古い神社から頂いた、樹齢500年ほどの杉の木で盆を彫る。
直径が大きすぎて製材機には入らなかったため、楔を打って割ることから始めた。

山から離れた場所で暮らしていると、身近にある木製品は山で伐られた木からできている、という至極当たり前のことすらリアルに感じることが困難になってくる。
本当はその木には長い歴史があり、また多くの人の手によって育てられ、伐られ、運ばれ、加工され、ようやく物となってここに存在する、ということを。

木は冬を越すために、秋の彼岸を過ぎた頃から水を吸い上げることを止め、体内の水分量を下げることで凍結による破裂を未然に防ぎ、代謝を落とし休眠状態になる。春の彼岸を迎える頃には徐々に活動を再開し、春夏は盛んに成長しようとする。その成長スピードの差が、春夏は早く大きくなるため薄い色、秋冬は成長量が少なく密度が濃くなるため濃い色となって現れ、つまりそれが我々が木目と呼ぶものとなる。
よって四季のある日本では、必ず1年に1本年輪が形成される。

つまり、木目の線の数だけその木は冬を越してきたことになる。

身近にある木のものの年輪を、そんなふうな想像を持って眺めてみてはいかがだろう?